「200万円も値引きできた。だから安く買えたはずだ」。不動産を購入するとき、値引き額が大きいほど得をしたように感じる。しかし、売出価格そのものが相場より高ければ、値引きできても高値掴みになる。本記事では、5800万円の新築マンションを買った後輩と、高級腕時計を前に固まった私の失敗談から、不動産をできるだけ安く買うための本当のコツを考える。
この記事のアジェンダ
◆1.不動産投資の必勝法は?
年末、サッカー部時代の後輩が結婚したというので久しぶりに会った。購入した新居の話題になると、後輩は誇らしげにこう言った。
「ななころ先輩、200万円値引きして買えたんです!」
都内で5800万円で売り出されていた新築分譲マンションを、不動産営業マンと交渉して200万円値引きして買ったという。
「不動産をできるだけ安く買いたい」。これは私たち不動産投資家にも共通する思いである。不動産投資の必勝法は「できるだけ安く買うことだ」と言う投資家もいる。
たしかに、安く買うことはリスクヘッジになる。割安に買うことができれば、失敗する可能性を下げられる。そのために毎日・毎週、新着物件や競売、公売をチェックし、不動産会社を何社も回って割安な物件を探す。
購入時には指値や値引き交渉を行い、ときには売主や仲介会社に怒られながら、それでも必死に安く買おうとする。
では、不動産をできるだけ安く購入するには、どうしたらよいのだろうか。何かコツはないのだろうか。

◆2.「安い」とは?
ただ、ちょっと待っていただきたい。「安い」とは何だろうか。
1億円で売り出されている一棟マンションを、2000万円値引きして購入したら、それは安く購入したと言えるのだろうか。
5800万円で売り出されていた新築分譲マンションを、200万円値引きして購入した後輩は、本当に安く買ったと言えるのだろうか。
不動産営業マンから「この物件は安いですよ。絶対にお買い得です」と言われ、それを信じて買った結果、実は高値掴みだったということもある。怖い世界である。
「都内の好立地の一棟アパートが、利回り8%の高利回りで、手出しなしの全額融資で購入できます」と言われ、奈落の底へ突き落とされた「かぼちゃの馬車」のオーナーもいる。
ある人には安く見える物件でも、別の人には高く見える。不動産は、適正価格の見極めが非常に難しい。これは#1「ピカソの絵、いくらで買う?」にもつながる話である。
自分の中で「安い」の基準が明確でなければ、思わぬ高値掴みをして大失敗することがある。かといって、安さだけを追い求めたり、高値掴みを恐れたりしていると、いつまでたっても物件を買えない。
「安い」とは、思っている以上に奥が深いのである。
◆3.ななころの失敗談
お恥ずかしい話だが、私はやらかしてしまった……苦笑。
新型コロナウイルスが大騒ぎになり始めた2020年のことである。某百貨店では高級腕時計が売れなくなり、在庫が大量に余っていた。中国からのお得意様が来なくなったことも響いていた。
当時、妻がその百貨店で働いており、社員限定の高級腕時計在庫処分セールの案内が届いた。70%オフ、80%オフという大セールである。
普段は手の出ない100万円、200万円の高級腕時計が、20万円、40万円で買える。妻も私も色めき立ち、すぐ買いに行こうとなった。
時計売場の社員専用バックヤードに通されると、売れ残った高級腕時計が100本以上並んでいた。
ところが、それらを目の前にして、私と妻は固まってしまった。
「どの腕時計が安いのか」「どれがお買い得なのか」。どれも同じに見え、さっぱり判断できなくなったのである。
私たちには、高級腕時計の高い・安いを判断するための「基準」がなかったのだ。
◆4.自分なりの「物差し」を持つ
不動産は、世の中にまったく同じものが一つとしてない。立地、築年数、建物状態、賃料、権利関係などが異なり、比較することが非常に難しい。高級腕時計より、高い・安いを判断するのが難しいと言っても過言ではない。
だからこそ、不動産投資では「知っているか、知らないか」という情報差が大きく影響し、そこに投資妙味も生まれる。
しかも、不動産は「一物四価」「一物五価」と言われる。公示価格、基準地価、相続税路線価、固定資産税評価額などがあり、さらに積算価格、実勢価格、収益還元価格といった判断軸もある。
不動産会社、銀行、投資家によっても見方は異なる。判断基準が難しい世界である。
だから、不動産をできるだけ安く買うコツとは、単に大きな値引きを取ることではない。自分なりに高い・安いを判断できる「物差し」を持つことである。
たとえば、周辺の成約価格や賃料相場、想定される修繕費、融資条件、保有中の収支、売却時の出口までを確認し、自分の投資目的に合う購入上限を決める。その物差しがあって初めて、値引き後の価格が本当に安いのかを判断できる。
自分なりの判断基準を明確にしていこう。

◆5.編集後記
この日、妻と私は、それぞれ一本だけ時計を購入して帰った。
近年、高級腕時計はどんどん値上がりしている。定価が上がり、当時の2倍、3倍になっているブランドやモデルもあるという。
あのとき、私と妻に腕時計を目利きする力があり、大量に購入していれば、今ごろは一財産を築くことができたかもしれない(笑)。
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◆6.不動産の価格判断に関するよくある質問
Q1.値引きできれば、物件を安く買えたと言えるのか?
値引き額だけでは判断できない。売出価格が相場より高ければ、大幅に値引きされても割高な可能性がある。周辺の成約事例、賃料、修繕費、融資条件、出口価格を踏まえた購入総額で判断する必要がある。
Q2.不動産価格の「物差し」には何を使えばよいのか?
実勢価格、積算価格、収益還元価格に加え、周辺の成約事例と賃料相場を確認する。投資物件では、空室率、運営費、修繕費、借入返済を含む実質収支と、将来の売却可能性まで見ることが重要である。
Q3.高値掴みを防ぐため、指値の前に何を決めるべきか?
自分の投資目的と必要利回りから逆算した購入上限である。値引き率ではなく、その価格で保有中の収支と出口が成立するかを確認する。上限を超えたら見送るというルールも、物差しの一部である。
「安く買う」ための価格判断を図解したA4レポート

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