不動産投資を始めようとすると、「新築アパート、中古アパート、中古戸建、中古マンションのうち、どれを買えばよいのだろう」と迷うことがある。
選択肢が多いほど、経験者から正解を教えてもらいたくなるのは自然なことである。しかし、年収も自己資金も目標も違う以上、誰にでも当てはまる一つの答えはない。
今回は、楽待相談室に寄せられた相談をもとに、物件種別を決める前に考えておきたい「戦う土俵」について整理する。
◆1.本日の相談
今回取り上げるのは、楽待相談室に寄せられた「物件購入のご相談になります。」という質問である。
相談者は会社員で、年収は約700万円。相続によってアパート2棟・8世帯を所有しているが、自分で一から不動産投資を行った経験はない。一方、ハウスメーカー勤務のため、リフォームに関する知識や人脈は持っている。
相談内容は、新築アパート、中古アパート、中古戸建、中古マンションのうち、どのような物件を買っていけばよいか、というものであった。
ただし、なぜ不動産投資をするのか、どこをゴールとするのか、どのエリアに住んでいるのか、自己資金はいくらなのかといった重要な情報は書かれていなかった。

◆2.物件種別だけでは答えられない
この相談への回答は簡単ではなかった。相談者に関する情報が少なすぎたからである。
月々の収入を増やしたいのか、将来の資産をつくりたいのか、短期間で規模を拡大したいのか。目的が変われば、選ぶべき物件も資金の使い方も変わる。
さらに、自己資金、勤務先や年収、住んでいる地域、使える知識や人脈によっても、取り得る戦略は異なる。物件の種類から考え始めるだけでは、その人に合う答えにはたどり着きにくい。
◆3.不動産投資は競争の世界
相談者は相続でアパートを所有し、不動産に関わる仕事にも就いている。ただ、自分で物件を探し、融資や価格を判断して購入した経験はまだない。
不動産投資の市場には、豊富な資金と経験を持つ投資家がいる。知識や経験が浅いまま同じ条件で競えば、良い物件を買えないだけでなく、悪質な業者や根拠の乏しいコンサルタントに利用されるおそれもある。
そこで私が回答したのは、物件種別を選ぶ前に、自分の強みを発揮できる市場を探すという考え方である。ランチェスター戦略でいう「弱者の戦略」を不動産投資に応用するのだ。
◆4.アパホテルに学ぶ「弱者の戦略」
原文で例に挙げたのが、アパホテルの成長戦略である。創業期は石川県発祥の小さなホテル会社であり、いきなり強豪が集まる金沢市中心部では戦わなかった。
まず金沢の郊外へ三角形を描くように出店し、競争相手が比較的少ない局地で認知度を高めた。原文では、これを「3点攻略法」と紹介している。
郊外で力をつけた後に金沢中心部へ進み、やがて都心、全国へと展開した。最初から大手と正面衝突するのではなく、勝てる小さな市場に集中して足場を築いたのである。
不動産投資も同じである。資金力のある投資家が集まる市場をそのまま追いかけるのではなく、自分の知識、経験、人脈を生かせる地域や物件に集中する方が、勝機を見つけやすい。

◆5.自分の強みから物件を逆算する
私自身、不動産投資を始めたときは知識も経験もなく、自己資金は300万円、年収は600万円ほどであった。
そこで、強豪がひしめく都心を避け、他の投資家が積極的には取り組みたがらない地方に活路を見いだした。利回りにこだわり、限られた資金でも取り組める物件を探して買い進めた。
その結果、スタートから5年で給与収入を大きく超える家賃収入を得て、会社員を卒業できるところまで到達した。
もちろん、地方の高利回り物件が誰にとっても正解ということではない。今回の相談者であれば、ハウスメーカー勤務で培ったリフォームの知識や人脈が強みになる可能性がある。大切なのは、他人の成功例をそのまま真似るのではなく、自分の目的、現在地、強みから戦う土俵を決めることである。
土俵が決まれば、その市場に適した物件種別、エリア、価格、利回りは自然と絞られてくる。

音声で聴く|毎日3分!不動産投資メモ録 #6
今回の内容はStandFMでも聴くことができる。
◆6.編集後記
楽待相談室には、自分とは無関係に見える質問も数多くある。しかし、他人の質問と経験者の回答を自分の状況に置き換えて読むことで、判断力を鍛える材料になる。
不動産投資は、学校の試験とは違って「カンニングOK」の世界である。先人の質問、失敗、回答から学び、自分の投資戦略へ生かしていきたい。
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