※この記事は実際の不動産体験をもとにしていますが、多少アレンジした「フィクション」として楽しんで頂けると幸いです。 |
◆想像を超えたボロボロ
常磐線日立駅から歩いて30分。坂を登ったり下ったりしながら、ようやく目的の場所に辿り着いた。なかなか距離がある。季節はまだ春にも関わらずすっかり汗ばんでいた。
目の前には競売の対象となる建物がある。写真で見た暗くてボロい監獄のようなあの建物だ!ドキドキしながら建物に近づいてみると、、、驚いた。想像以上に汚くてボロボロだったからだ。外壁は茶色く変色し、青い屋根は色があせてしまっている。
何年築なのかを確認したいと思ったわたしは、かばんの中からプリントアウトしておいた物件明細書を取り出し急いで読み返した。「昭和53年築」とある。築30年を超えている旧耐震の建物だ。
建物は中央の階段を挟んで正面向かって右側に4階建てで4戸、左側に3階建てで3戸ある、全7戸の細長い鉄筋コンクリート造の建物だ。物件明細書には7戸中5戸が入居中とあった。
俺らとそんなに年は変わらないのに、予想以上にボロボロだね!?苦笑
冗談交じりに妻に話しかけてみるものの、妻は完全に引いている。。。不動産投資に反対こそしなかったものの懐疑的だった妻がどう思っているのか気になって仕方がなかった。
1階の左右にある玄関扉や集合ポストは錆びて腐食している。そのすぐそばには上に行くための階段があるが、タイルは割れ、手すりは錆びてボロボになっている。その奥、階段の下には、なにやら見慣れない大きな白い箱があった。「これは何だろう???」と疑問に思いながら階段へと進んだ。
◆妻からの意外な答え
ちょっと力を入れたらボキッと折れてしまいそうな錆びた手すりを、おそるおそる掴みながら階段を登っていく。物件明細書通りに入居者がいるかどうかをチェックした。2階と3階の左側の部屋が空き室のようだ。電気メーターも回っていなかった。
物件を見に行くのもなにもかもが初めて。わたしはただただビクビクしていた。「入居者が出てきて怪しまれたどうしよう」「近隣の人に怪しまれたらどうしよう」そんなことばかりが気になった。物件調査どころではなかった。
初めての現地調査で初めて訪れる土地。購入していいかどうかの判断もつかない。初めての現地調査。何をチェックすべきかもわからないまま、ただただ周辺を歩いた。その場に10分もいただろうか、現地調査もそこそこに切り上げて、わたしと妻は駅へと引き返すことにした。
この物件どう思う・・・?
おそるおそる帰りの道中で妻に聞いてみると、「いいんじゃない?よくわからないけれど」と驚くほどあっさりとした答えが返ってきた。全力で「やめた方がいい」と説得されるのかと思っていたわたしは拍子抜けしてしまった。あまりに意外な妻からの答えに戸惑った。
えっ、良いの???(汗)
妻のこのまったく物怖じしないところには前々からたびたび驚かされる。以前、二人で海外旅行に行く時にもこんなことがあった。
成田空港で食事を済ませいよいよイタリアに向けて出国というタイミングで、妻がパスポートが無いと言い出したのだ。出国の時間も迫っている。わたしは焦った。ところが、妻は涼しい顔で「先に行ってて!」と言うのだ。それも笑顔で。まるで近所に出かけるかのように。「この人には勝てないな・・・」あらためてそう思わされた出来事だった。
そんな妻の一言に勝手に安心したわたしは、入札することを決心した。
(第10話につづく)
◆編集後記
現地調査はどうやって行えばいいのでしょうか?
時々「物件を見ずに買いました」という人がいますが、購入前の現地調査は必須です。しかし、当時のわたしは不動産投資素人。まったく現地調査の仕方を良く分かっていませんでした。
わたしが参考にしていた書籍などには多くのことは書かれておらず、今のようにインターネットで調べたりすることができなかったからです。今考えると危険極まりないですよね。実際に落札してからとても苦労する羽目になったのですが・・・(汗)
また、書籍には「自分だったらその場所に住んでもいいか?」で最終判断すると書かれていたりしますが、その通りにしてしまうと「こんなボロボロの物件には住めない」と購入を断念していたことでしょう。特に私のような高利回り高キャッシュフローの物件を狙っていると買えません。
それでは、現地調査はどうやって行えばいいのでしょうか?
これまで100以上の物件を現地調査をした経験や、過去に取得した宅地建物取引士の講習内容から、現地調査に関しての主なポイントをまとめました。これから初めて物件調査をする方に向けてシェアしたいと思います。
【物件調査で失敗しないための7つのポイント】
①記憶に頼るな記録に頼れ!とにかく写真を撮って撮って撮りまくる
②超重要!前面道路の確認
③現地で見て確認!境界線はどこだ?(工作物、越境等)
④何がある?物件周辺の状況確認(環境含む)
⑤雨漏りはやっかい!建物の状態をしっかり見極める(増改築含む)
⑥入居者や管理状況※ヤ○ザや不良入居者のいる物件の見極め方法
⑦生の声を集めよう!業者ヒアリング
ここではすべてを細かく解説できませんが、特に前面道路の確認はとっても重要で、前面道路の幅員が4mあるかないかで、土地の価値が大きく変わってきます。販売図面に書かれていることを鵜呑みにせず、メジャーで実際に現地で測るようにしましょう。
また、初めての物件調査はドキドキです。当時のわたしのように調査不足になってしまう可能性もあります。そのため、記憶に頼るのではなく、できるだけバシバシ写真を撮って記録を残すようにしましょう。