※この記事は実際の不動産体験をもとにしていますが、多少アレンジした「フィクション」として楽しんで頂けると幸いです。 |
◆憧れのマンションオーナー
憧れだったマンションオーナーになった!「マンションオーナー」まるで大富豪の仲間入りにでもなかったのような、なんともいい響きだ!
青山とか麻布とか白金とか高級住宅地のマンションオーナーとはイメージがだいぶ違うが、そんなのは関係ない。とにかくマンションオーナーになったのだ!
これまではマンションオーナーなんてまるで別世界のことで、うだつの上がらない普通のサラリーマンにはまったく関係無いと思っていた。それが、ランチに立ち寄ったインドカレー屋さんで目にした本によって、まったく違う人生が開かれたのである。
落札できた幸運に感謝しながら、喜びをしっかりと噛みしめて味わっていた。
◆衝撃の事実が・・・
落札日を境にまるで世の中がすべて変わってしまったような感覚だった。いろいろなものが輝いて見えた。あれだけ苦痛だった毎朝の通勤電車も会社の上司も。
とはいえ、マンションオーナーといっても、まだ実感は湧いていなかった。実際には落札してから現地には行くことはできていなかったからだ。
開札日は水曜日だったため、仕事がお休みとなる次の土曜日に現地に行き、代行業者の(仮称)ピンフ不動産の社長とお会いする予定になっていた。事前に代行業者さんが前所有者から鍵を預かり、現地で鍵の引き渡し行う手はずになっている。
週末がくるのを楽しみにしながら日々を過ごしていた時、携帯に一本の電話がかかってきた。代行業者さんからだ!
もしもし!(キラキラ)
ななころさん、困ったことがありまして。実は、その・・・
どうしたのだろうか?あまり良い話しでは無さそうだ。ちょっと不安になるわたしをよそに、代行業者は話しを続ける。
実は元の持ち主(前所有者)が、右◯関係の方らしくて・・・
えっ!?えっ!?どういうことですか???
私は一気に青ざめた。思想的に強い偏りがある方が所有する物件だったのだ。素人が手をつけてはいけない物件だったのだ。そしてこれまでのすべてのことに合点がいった。
築30年でまだ耐用年数が残っていて、年間380万円もの家賃収入を生み出す可能性のある1棟マンションが、最低売却価格210万円という金額のワケが・・・。
◆前所有者の噂
狼狽するわたしを落ち着かせるように代行業者は話しを続けた。
地元では割りと有名な方らしくて、ややこしいことになる可能性もあります。落札者の連絡先を知りたいという連絡が、うち(事務所)にも入っているようなのです。
ど、どいうことですか?(おそるおそる)
要件は分かりません。ただ、お金に困っている可能性もありますので、金銭的な要求があるのかもしれません。
そっ、そうなんですか・・・。私はどうしたら良いでしょうか???
代行業者の(仮称)ピンフ不動産の社長さんが、事前に前所有者から鍵を預かるために、いろいろと現地調査をしていて判明したらしい。強面の社長さんも動揺しているようだった。
社長さんが調べたところによると、前所有者は地元ではかなり有名で、落札したマンションのすぐそばにあるマンションの最上階に住んでいるとのことだった。良くない噂もいっぱいあった。
大音量で街宣車を何台も連なって率いていたり、すぐそばの通りのスーパー脇に路駐する車を見つけては駐車料金を請求したり、地元のお祭でみかじめ料を要求したり、悪行の限りを尽くしていたそうだ。
目の前が真っ暗になり、社長さんが話している言葉がすごく遠くに感じた・・・
(第16話につづく)
◆編集後記
現地調査で絶対におろそかにしてはいけない重要なポイントとは?
この頃のことは思い出しても身が震えます。ド素人だったわたしは現地調査のイロハをまるで知らなかったのです。向かいのクリーニング屋さんにも話を聞きましたし、住んでいる人のチェック、物件のチェックもしました。
しかし、現地調査で絶対に忘れてはいけない重要なポイントをおろそかにしていたのです。わたしに足りなかったもの、それは「現地の不動産屋へのヒアリング」だったのです。
ですから、現在のわたしが、この頃のわたしにアドバイスするのであれば、「地元の不動産会社は必ず3件は回って、物件のことをヒアリングすること」と言うでしょう。それぐらい物件を購入する時は重要なポイントとなります。特に「賃貸専門の不動産屋」に聞くことが重要になります。
地元の不動産屋が、細かく教えてくれるワケとは?
ただ、「見ず知らずのよそ者に、不動産会社が丁寧に教えてくれるのか?」と疑問に思われる方もいるかもしれませんね。「ちょっと抵抗あるな」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、結構丁寧に教えてくれます。不動産屋にすると、管理を任せてくれるかもしれ潜在顧客として見てくれるからです。地元の人しか知らないような情報を、事かま書く教えてくれるところもあります。
ですので、現地調査で地元の不動産屋さんへのヒアリングは欠かさないようにしましょう。今ならこんな風に偉そうに言えますが・・・(汗)