※この記事は実際の不動産体験をもとにしていますが、多少アレンジした「フィクション」として楽しんで頂けると幸いです。 |
◆海に向かって決意する
競売物件を見終わると帰宅途中に妻と一緒に地元の温泉に立ち寄った。日立にあるその温泉は露天風呂から太平洋が一望できるとあって、たくさんの人でとても混んでいた。
初めての現地調査の緊張をほぐしながら、ゆっくりとお風呂に浸かり海を見渡した。遠くの方には漁船だろうか小さい船が見える。一面に広がる水平線を見渡しながら、「絶対に成功するぞ!」と心の中でつぶやいた。
渋滞に巻き込まれながら家に帰宅すると、長時間の運転の疲れも忘れて、さっそく入札するために準備に入った。
◆入札額をいくらにするか?
実は競売に挑戦する前、競売関連の書籍に加えて、競売の有料教材を購入していた。不動産投資は投資する金額が金額なだけに、絶対に失敗はできない。3万円弱する教材だったが思い切って購入した。
その教材には「競売のメリットの1つは、自分で入札金額を自由に設定できるところ」と書かれていた。自分の予算に合わせて、自分の決めた金額で入札できるからだ。これは「自由に指値ができる」とも言える。
普通は売り出している金額を無視して無謀な指し値をしたら、業者さんや売主さんを怒らせてしまうこともある。たとえば、3000万円で売り出している物件に500万円で指値をしたらどうだろうか、もう二度と付き合ってくれなくなってしまうかもしれない。
しかし、競売は違う。いくらで入札しようが相手を怒らせることはない。相手のことを考えずにどんどん指値をしていけると考えられる。なるほどと思っていた。
ただそれだけに入札額を決めるのは難しい。あまりにも自由に設定できるので、素人のわたしにはいくらに設定するかが非常に迷うところとなった。今回の物件の場合は、買受可能価額である233万円以上の金額であればいくらでもいいのだ。入札額いくらにしようか???
◆ステップ①購入予算を決める
まず最初に購入するための予算の上限を決めていく。教材には、不動産競売における購入予算の計算方法は以下のように書かれている。
自己資金 ÷ 30% = 購入予算 |
これは、金融機関が自己資金の3割を目安に判断するからなのだそうだ。もちろん勤務先や年収などの属性も関係あるだろうが、これはひとつの目安となった。
今回競売で使える自己資金は300万円だ。計算式に当てはめると「300万円 ÷ 30% = 1,000万円」。1,000万円だったら融資してもらえることになる。まだ金融機関に当たったわけではないが、入札の上限額を1,000万円とした。
当時はまだフルローン・オーバーローンは一般的ではなく、自己資金3割が当たり前でした。また、競売物件への融資も一般的でなく、候補先としては国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)ぐらいしかありませんでした。
◆ステップ②利回りを決める
次のステップは「自分で落札したいと考える利回りを決める」と教材にある。この物件を落札するとしたら利回り何%で落札したいかを考えた。
ステップ①で計算した予算上限(1,000万円)で入札するした場合、満室想定の年間家賃収入は378万円だから、利回り37.8%となって2年で回収できる計算だ。上限で入札しても申し分ない。
378万円 ÷ 1000万円 = 利回り37.8% |
一方で、競売は一円でも高い金額を入れた人が勝利する。1000万円で入札してわたしが1番手となり落札できたとしても、2番手が500万円で入札していたら意味がない。なるべく2番手とギリギリぐらいで入札したい。
<落札金額と表面利回り>
・落札金額233万円 → 表面利回り163%
・落札金額500万円 → 表面利回り76%
・落札金額1000万円 → 表面利回り37.8%
いくらで入札するべきだろう???
計算機を弾いて、ニンマリしては、深い溜息を付いたり、、、安易に落札希望の利回りを決めたところであまり意味が無い気がした。そこで次に考えたのが・・・
(第11話につづく)
◆編集後記
競売に限らず、購入前の物件調査は非常に重要です。前回(第9話)の編集後記では「物件調査で失敗しないための7つのポイント」をシェアしましたが、当時は現地調査をポイントを分かっていなかったがために後でとんでもない目に会いました。。。
そこで、今回は現地調査をする一歩手前、物件調査に行く前の心構えをシェアしたいと思います。
ワールドカップに3大会連続で出場し、日本人史上初めて3大会連続でのゴールを決めたサッカーの元日本代表の本田圭佑選手は言います。
「勝負を決めるのは準備。なかでも気持ちの準備以上のものはないと思う」(本田圭佑選手) |
本田圭佑選手のこの言葉、すごく分かります。わたしは20代のころフロアボールというスポーツの日本代表キャプテンだったことがあります。ワールドカップに参加する機会が何度かありましたが、完璧な準備で望んだ大会では良い結果を残せた一方で、やはり準備が足りないときに良い結果を残せたことは一度もありませんでした。
フロアボールとは、スウェーデン発祥のアイスホッケーに似たスポーツです。日本ではマイナーですが、北欧では体育の授業になるほどすごく人気があります!
物件調査も同じです。現地での調査を活かすも殺すも準備次第。今回はその準備のポイントについて7つまとめます。
<物件調査の前の7つの心構え> 1.事前にGoogleマップとストリートビューで確認しておくべし 2.販売図面、レントロール、登記簿謄本、公図、測量図を事前に準備すべし 3.地図、水準器、ICレコーダー、デジカメ、方位磁石、スリッパなどのアイテムを事前に準備すべし 4.できればリフォーム業者や女性と一緒にいくべし 5.六感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、感覚)+直感すべてを研ぎ澄ますべし 6.買いたい金額を事前に決め、即買付できるようにすべし 7.トイレの場所を調べておくべし |
この7項目が基本かつ重要な心構えにしています。私は現地調査をおろそかにした結果、とんでもない失敗をしました。購入後に失敗に気が付き、数百万円数千万円の損失を出さないためにも、準備をしっかり行い現地調査をしていきましょう。