※この記事は実際の不動産体験をもとにしていますが、多少アレンジした「フィクション」として楽しんで頂けると幸いです。 |
◆目指す最終着地は「利回り25%」
「233万円で落札できれば!(ムフフッ)」などと都合の良い結果を想像してみたり、「いやいや、そんな金額で落札できるワケがない・・・」と現実に引き戻されたり、、、そんな心の綱引きを、何回も何回も何回も頭の中で繰り返していた。
目指すのは最終着地は「利回り25%」。内外装の修繕費を含めた総予算は1500万円。修繕費を700万円〜1000万円を想定すると、入札金額は500万円〜800万円が妥当。あとは入札金額をいくらにするかだけだ。
<利回り25%で着地させるには?>
・入札金額250万円 → 修繕費1250万円
・入札金額500万円 → 修繕費1000万円
・入札金額700万円 → 修繕費800万円
・入札金額1000万円 → 修繕費500万円
◆足りないお金どうする?
ところで、入札する前に解決しておかないといけないことがあった。それは、「足りないお金をどうするか?」ということだ。
この時、私が競売に突っ込めるお金は300万円しかない。修繕費についてはあとから国民生活金融公庫(現・日本政策金融公庫)から借りることを考えていたが、もし落札することができたのなら、入札した金額を即座に振り込まなくてはいけない。
もし300万円以上の金額で入札するには、どこからか調達してこなければならないのだ。不足金額をどうするか考えた時、頼る先は1つしかなかった。
「ちょっと相談したいことがあるんだけど・・・」と、地元の焼鳥屋に父を呼び出した。父のお気に入りの焼き鳥屋だったからだ。父親にお金を借りることに最初はすごく抵抗があったけれど、覚悟を決めて頭を下げることにしたのだ。
「もし断られたら、きれいさっぱりあきらめよう」そう覚悟を決めて、正直にすべてを父に話した。すると、最初はすごく怪しんで聞いていた父も、わたしの必死の説明に折れたからなのか、父からは意外な答えが返ってきた。
「お前が挑戦するなら応援するよ!」

◆入札額はこれしかない!
父が協力してくれることになり、不足金額についてはあてがついた。あとは突き進むだけだ!悩みに悩んだあげく、最終的に入札金額は「エイヤー!」で決めることにした。
入札金額は「810万1010円」!!
なぜこの入札金額にしたかというと、「普通に入札したらつまらない。ちょっと遊び心をいれよう!」と考えたからだ。学生時代サッカーをやってきて大好きな背番号が10番だったから、「10」を3つ連なるようにして、8101010円という金額にして縁起を担ぐことにしたのだ。
<ななころの思考回路>
「きっとたくさんの入札があるだろう。500万円以下で落札するのは難しい。」
↓
「500万円以上だったら、他の人はいくらで入札するだろうか?」
↓
「たぶんゲンをかついで777万円で入札する人がいるだろうな!?」
↓
「さらに、777万円で入札する人がいるのを見越して、800万円で入札する人もいるのではないだろうか」
↓
「よしっ!それなら810万1010円だ!!」
こんな入札金額の決め方は、不動産競売のプロから見たらアホだと思われるかもしれない。この入札金額が正しいのかすら分からない。
ただ、わたしは不動産競売というゲームを目一杯楽しむことにした。修繕費を含めた最終着地の利回りは25%を目指し、落札できなかったとしても「こんな経験をした」と後から振り返えることができるように。あとは運を天にまかせて。
そして、いよいよ開札日が近づいてきた・・・
(第13話につづく)
◆編集後記
最近の不動産競売の事情はどうなのでしょうか?
最近は、法が整備され安全になり、業者だけでなく一般の方による競売入札も増えてきたと言われています。そのため、価格が一般の市場と近くなってきています。このような物件が出ることは珍しくなってきました。
一方で、中身が見れず写真や外観だけで判断しなければいけないため、妙な占有者がいてトラブルになるケースもあります。価格が市場に近づいてきてお得感が薄れてきたことと、トラブルの負担が大きいことから、競売をあきらめる人も多いのではないでしょうか。
しかし、あなたは「いまだに落札者は圧倒的に業者が多い」という事実をご存知でしょうか。聞いた話しでは、落札者の9割が業者だそうです。この事実はいったい何を示すのでしょうか?
それは、いまだに業者は不動産競売で物件を仕入れて、一般市場で販売しているということです。業者はプロですから、採算が取れないような金額で落札しても意味がありせん。彼らは市場価格よりも単純に安い値段で買えばいいわけではなく、さらにそこに、利益、経費、人件費などの費用を乗せて転売しなければならないのですから。
競売が一般的になり個人の入札参加も増えているようです。そのため落札金額が跳ね上がることも少なくありません。それでも、一般市場価格の1割〜3割で落札できる魅力が競売にはあるんです!
ですから、一般的に言われている「不動産競売に旨味は無くなっている」というようなことはなく、「不動産競売は今でもお宝物件を手に入れるチャンスがある」と考えてもいいのではないかなとわたしは考えています。
ただ、アパートやマンション1棟のような共同住宅は、「取り下げ」になってしまうことが多くなりました。開札前に業者が売り主や債権者と交渉して、任意売却物件としてさらっていっているのです。