◆サブリース付き投資用マンション
前回のステップでは、「高値売却」を最終ゴールとした場合、なるべく高く売るための準備として家賃を上げる具体的な方法についてお伝えしてきました。高値売却のためには家賃アップが欠かせないからです。
物価高騰・インフレの今のタイミングは、家賃アップの最適なタイミングと言っても過言ではありません。恐れず、勇気を持って、1千円でも2千円でもいいので家賃アップに向けて動くことが重要なのです。
しかし、購入した投資用マンションが「サブリース付き」となっているケースが多々あります。
ただでさえサブリース付きの物件の場合、サブリース無しの物件よりも圧倒的に売りづらくなります。売却金額は低くなりますし、銀行評価も大きくマイナスされ売却しづらいため、高値売却など望むべくもありません。
そこで、サブリース付きの投資用マンションの場合は、まず「サブリースの解約」が投資用マンション購入失敗から復活への4thステップとなるのです。サブリースをどうやって解約していけば良いでしょうか?
◆サブリース解約は非常にやっかい!?
ところが、このサブリース、解約が非常にやっかいなのです。
ご存知の通り、このサブリース解除がとても難しい。サブリース契約はサブリース会社が借地借家法によって大きく保護されているため、オーナーよりもサブリース会社の方が法律によって守れる立場になっているのです。
そのため、原則オーナー都合での解約はできません。「家賃を上げたいから」「売却するから」といった理由はまず通りません。解約するための「正当事由」が必要になってくるのです。
たとえば、オーナー側からのサブリース解除の難しさを表すこんな裁判があります。
この裁判は、オーナーがサブリース会社に対し、契約期間満了によって契約が終了したことを主張して更新を拒絶し、サブリース解除しました。ところが、正当事由とは認められずオーナー側の敗訴となりました。
オーナー側からのサブリース解除はとても難しくやっかいなのです。
判決日 | 平成24年1月20日 |
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裁判所 | 東京地裁 |
原告(貸主) | オーナー |
結果 | オーナーの請求は正当事由がないため棄却 |
出典:一般財団法人 不動産適正取引推進機構「RETIO判例検索システム」
◆サブリース解約は絶対に不可能か?
しかし、サブリース解約は絶対に不可能なのでしょうか?
よくネット等の情報を見ると「サブリース解約は不可能」かのような記事を見かけますが、決して不可能ではありません。サブリース契約の解約は可能です。やっかいなケースがあることも確かですが、実際にサブリース解約に成功した事例はもたくさんあります。
それでは、どうすればサブリースを解約できるのでしょうか?
サブリース契約を解約するためにまず最初に確認しておきたいことは、オーナー側からのサブリース解除要求に対するサブリース会社側の態度です。オーナー側からサブリース解除を切り出した時に、「断固拒否」なのか「条件次第では解約OK」なのか「すんなり解約OK」なのかです。
サブリース会社側の態度が意外と「すんなり解約OK」だったり、「◯月分の賃料を支払えば解約OK」だったりする場合もあります。この場合はご自身でもサブリース解約まで持っていくことができます。サブリース会社の担当者に連絡して解約を進めていきましょう。
一方で、サブリース会社側の態度が「断固拒否」の場合や、あまりにも「オーナー側に不利な条件を提示」してきた場合は、オーナー側も粘り強い交渉の覚悟を決める必要があります。この場合は一人で交渉するよりも、サブリース解約の経験豊富な弁護士や専門家に相談してしまった方が良いでしょう。
◆サブリース会社の態度を確認するためには?
サブリース会社側の態度を確認するためにはどうしたら良いでしょうか?
孫子の兵法には「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とあります。まずは相手を知り、自分がどういう状態なのかを把握することから始めていくことです。
そのためにはまず「サブリース契約書」の内容を確認します。サブリース契約書の中身を良く確認し、契約期間・解約条項・特約事項等がどうなっているかをよく確認することで、サブリース会社のサブリース解除要求に対する態度が分かります。
「サブリース契約書」とは、表紙に「マスターリース契約書」「一括賃借契約書」「サブリース原賃貸借契約書」などと書かれたものです。サブリース業者によって題目は違いますが、購入時に渡された「〇〇〇契約書」と書かれている書類です。
契約書のどこを確認すればよいかについですが、特にチェックすべきポイントは以下の通りです。
□チェック1.「契約期間及び更新」→ いつからいつまでの期間になっているか、更新についてどうなっているかを確認します。
□チェック2.「契約の解除」→ 契約解除について記載されています。どのようなケースで契約を解除できるのか、解除通知からどのくらいの期間で解除できるのか、解除する場合の条件などが書かれています。
□チェック3.「期間内の解約」→ 契約期間内に解約をする場合について記載されています。この条項が記載されていなかったり、解約は不可となっている場合は要注意です。
□チェック4.「明渡し時の原状回復」→ サブリース契約を解除して明渡しする時の原状回復内容についての記載が書かれています。
□チェック5.「特約事項」→ サブリース会社に一方的に有利な内容が記載されていないかどうかを確認します。
「解除条項」を確認し、「解約希望時の条件」「期間内の解約」について丁寧に記載されている場合、すんなり解除できることもあります!
◆立退料・違約金・弁護士報酬等の費用をどう考えるか?
サブリース解約には、特に費用もかからずにすんなり解約できるケースもあるとはいえ、ほとんどのケースではサブリース解約までには立退料・違約金・弁護士報酬等の費用がかかります。
費用はケースバイケースですし明確な基準はありませんが、サブリースの解約で請求される違約金の相場は、家賃収入の約6カ月分と言われています。家賃10万円の部屋で60万円程度かかることになります。弁護士に依頼した場合もおおよそ同程度の費用がかかると考えて良いでしょう。
ここではざっくりサブリース解除に100万円の費用がかかるとしましょう。この100万円を「高い」と考えますか?「安い」と考えますか?
僕の考え方は、サブリース賃料のままで物件売却しようとした場合と比べて、サブリース解除にかかった費用以上の高値で物件が売れるのではあれば「安い」と考えます。サブリース解除費用が100万円なのであれば、100万円以上高値で売れれば良いわけです。
たとえば、相場10万円家賃のマンションを利回り6%で売却する場合、サブリース賃料8万円で計算すると「1600万円」です。一方で、サブリースを解除し相場家賃10万円で貸すことができれば、単純計算で「2000万円」で売り出すことができることになります。
その差額「400万円」。残債との兼ね合いもありますが、サブリース解除費用100万円を支払ってでも、売却した方が良いという結論になります。サブリースを解除した方が売却しやすいのは言うまでもありません。
サブリース解除にかかる費用負担の大きさに尻込みしてサブリース解除をあきらめるのではなく、負の資産である負動産を手放すことができた場合のメリット等をトータルで考えて、サブリース解除を進めていくようにしましょう。
◆まとめ
今回は復活のための4thステップとして、「サブリース解除」についてお伝えしてきました。いかがだったでしょうか?
最終目標である「高値売却」のためには、サブリース解除は避けては通れません。サブリース付きでも売却することは不可能ではありませんが、売却が難しいどころか高値売却は望むべくもありません。できれば、売却するためにサブリースは解除しておきたいのです。
ところが、サブリース解除は一般的には難しいと考えられており、実際にサブリース解除までに粘り強い交渉が求められることもあります。また、サブリース解除のために多額の費用がかかることもあります。
それでも、サブリース解除が絶対に無理ではないということです。サブリース解除は可能だということです。サブリース解除できた時のメリットと比較しながら、腰を据えてじっくりとサブリース解除に向けて進めていくことをオススメします。
次回のステップでは、サブリース解除後の運営についてお伝えしていきます。
(第6話につづく)