◆高値売却の戦略
前回の記事では、高値売却には成功の方程式があるということをお伝えしました。重要なので繰り返すと「高値売却成功=物件スペック×戦略×不動産業者」です。
ポイントは、「物件スペック」がすべてではないということです。もちろん築浅で設備も最新で外観もきれいで立地も良いといった物件スペックであれば高値で売りやすいのは間違いありません。
でも、おそらくこの記事を読んでいるほとんど人が高値掴みしてしまっているはずです。普通には売れないから悩んでいるのだと思います。少しでも買った値段よりも高く or 少しでも残債よりも高く or 少しでも損切り額を少なくして売りたいと考えているのだと思います。。
そのため、「物件スペック」だけではダメなんです。そもそも「物件スペック」で見劣りするマンションだったりしたら、それこそゲームオーバーになってしまいます。だからこそ、高値売却には「戦略」と「不動産業者」の選定といった要素が重要になるのです。
また、高値売却できない人には共通点があることをお伝えしました。これまでたくさんの人から悩み相談を受けてきましたが、この共通点に該当する人は高値で売却できません。あなたが1つでも該当するようなら高値売却は望めませんし、言い方は悪いかもしれませんが、売却時においても不動産業者にカモられるだけになってしまいます。
それでは、「物件スペック」に頼らずに高値売却するにはどうしたら良いのか。いよいよこれから高値成功の方程式の重要な要素の1つ「戦略」について詳しく解説していきます。
「途中でへばってしまう。でも一段ずつ確実に上がっていけば、時間はかかっても頂上まで上がることができる。」
(マラソン金メダリスト・高橋尚子選手)
◆戦略① 売却価格の明確化
売却できない人の共通点にもあったと思いますが、「なんとなく高く売れたら良いなぁ」では絶対に高く売ることはできません。希望的観測ではまず売れないのです。
こんな面白い話があります。私の友人はずっと結婚したいと言っていました。会う度に「結婚したいな〜」「結婚できたら良いな〜」と言っていました。しかし、何年経っても一向に相手は見つからなかったのです。
ところが、”ひょんなこと”をきっかけに交際がスタートし、あっという間に結婚してしまったのです。なぜいつまでたっても結婚できなかった友人が、突然結婚できたのでしょうか?
それは、結婚したいと思う人のイメージを明確にしたことだったのです。どのくらいの身長?容姿は?どんな性格?どこに住んでいる?といった理想とする結婚相手を明確にしたのです。
すると、職場で一緒に働く同僚が、まさにその理想に近い相手だということに気がついたのです。以前までは仕事の話をするだけの仲だったのが、お互いに急接近していき結婚までたどり着きました。実は何年も理想とする結婚相手はすぐそばにいたのです。
それでは、単純に気が付かなかっただけだったのでしょうか?
いいえ、気が付かなかっただけではないですよね。それ以前は結婚がなんとなく現実感の無いフワフワしたものだったのが、結婚相手を明確化することによって結婚に向けて実際に行動するようになったのです。結婚が現実化したのです。
名著ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」には、以下のように書かれています。
以上のように、物件売却も同じです。「◯◯◯万円で売りたい!」という目標を明確化することによって、売却が現実化します。これまでのどこかあきらめモードだったマインドが変わり、売却に向けて現実的に動き出すことができるのです。
まずは、「◯◯◯万円で売る!」と売却価格を明確化することから始めていきましょう。
◆戦略② タイミング
なにごとも「タイミング」が重要と言われます。「鉄は熱いうちに打て」「思い立ったが吉日」「好機逸すべからず」といったことわざがありますが、どれもタイミングが大事だということを伝えています。
投資用マンションの高値売却に関してもこのタイミングがとても重要です。特に不動産は価格も高額ですから、タイミングを逃すと致命的になる可能性もあります。絶対にタイミングを逃してはいけないのです。
それでは、高値売却における絶好のタイミングとはなんでしょうか?いつが絶好のタイミングなのでしょうか?
1.市場動向
まず最初にほとんどの人が思いつくのが「市場動向」ではないでしょうか。物件価格が高値で推移しているタイミングで売った方が良いということを知っています。
大手不動産ポータルサイト健美家が毎月発表している「収益物件 市場動向マンスリーレポート2023年11月期」によると、区分マンションの価格は2022年からずっと上昇を続けていることが分かります。もっと長い期間でみると、2013年ごろから多少の上下はあるものの右肩上がりで上昇しています。
日本の金利が上がらない限り、しばらくはこの傾向が続くだろうと私は考えています。つまり今が絶好の売り時のタイミングだということになります。
2.融資動向
続いて重要なタイミングは「融資動向」です。
上記の市場動向とも密接に絡んでいますが、融資が出やすい時に高く売れる可能性が高くなります。銀行が収益物件への融資に積極的で低い金利でバンバン貸し出している時は、買い手も積極的ですから売りやすくなります。
では、今銀行は収益物件に積極的に融資しているのか?2023年7月3日の日経新聞の記事からも分かる通り、過熱感を危険視するほど銀行は積極的に融資している状況ということが分かります。
投資用不動産ローン、危うい融資競争 販売価格は最高値
投資用不動産ローン(アパートローン)が増えている。2023年1〜3月期の国内銀行による新規貸出額は8843億円と前年同期比4%増え、四半期の金額としては5年ぶりの高水準だった。地方銀行に加え楽天銀行などネット専業銀行が拡大している。物件の販売価格は最高値を更新し、過熱感から危うさを指摘する声もある。
3.家賃状況
続いて重要なタイミングは「家賃状況」です。
一般的に空室の時よりも入居者がいる時の方が高く売れます(投資家向け→実需向けに売る場合は空室の方が高く売れる)。さらに言うと、「第4話ステップ・3.家賃を上げる」で解説した通り、高い家賃で貸せているタイミングが最も高値で売れる可能性が高いです。
高く売れる可能性のある順番に表すと「サブリース > 空室 > 相場家賃 > 相場よりも高い家賃」です。サブリース付の場合、空室でも家賃は入ってきますが、売却する場合は買い手に融資がつきにくく最も高値で売りにくいです。
また、一般的に新築〜築10年は家賃の下落幅が大きく、築10年以降はゆるかに下落していきます。そのため、築10年以内のマンションであればなるべく早く売却した方が、高値で売れる可能性が高くなります。
タイミングまとめ
以上から言えることは、最も高値で売れる可能性のあるタイミングとは「今」です。市場動向・融資動向・家賃、「今」が絶好のタイミングが揃っています。
もしかしたら将来、さらに不動産価格が上昇するかもしれません。銀行がもっと積極的に融資するようになるかもしれません。家賃が上がるかもしれません。インフレとなるかもしれません。それは誰も分かりません。
それでも、日本の人口推移、日本経済の状況、税率、マンションの築年数、あなたの年齢とモチベーションなどを考慮すると、「今」が最も高く売れる可能性が高いと考えている次第です。売却するなら「今」です!
◆戦略③ 販売PR準備
続いての戦略は、「販売PR準備」です。
不動産営業マンは同時にいくつもの売却物件を抱えています。あなたのマンションが売りやすい物件で、買い手をすぐに見つけられると考えれば最優先で取り扱ってくれるでしょう。
ところが、この記事を読んでくださっている方が売却したい物件は売りにくい物件です。なかなか買い手が見つからないと判断されれば、後回しにされて積極的に売却活動をしてくれない可能性もあります。
そこで、あなたのマンションの特徴をまとめた販売PRするための準備をしておきます。具体的には不動産営業マンが一目で分かる販売PR用の資料を作成しておくのです。
販売PR用の資料に掲載する項目としては、あらかじめ買い手から質問をもらいそうな事項や、不動産営業マンが売りやすく手助けしてくれるような販促資料をA4一枚にまとめておくのです。
【主な販売PR資料のポイント】
1.物件概要
2.見栄えのする写真(お見合い写真)
3.修繕箇所と修繕履歴
4.現入居者属性
5.売却理由
◆まとめ
以上、高値売却成功に必要な要素の1つ「戦略」について、3つほど解説していきました。
この他にも細かい戦略はありますが、重要なポイントはすべて解説しました。売却金額を明確化し、高値売却できるタイミングかどうかを見定め、あらかじめ販売PR用の資料を準備しておくことで、高値売却の可能性が高まります。
ソフトバンクを一代で築きあげた孫正義さんは言います。
まずはじめに、どこで世界一になるのかの方向性を定めなければいけません。近くを見るから船酔いするんです。100キロ先を見てれば景色は絶対にぶれない。登る山を決めると道が自然と見えて来る。失敗を恐れずに、様々な手段を次々に試していれば、必ずどこかで当ります。
(ソフトバンクグループ株式会社代表取締役会長兼社長・孫正義)
戦略とは、最終的な目標を達成するためにとるべき行動計画です。戦略を立てることで、長期目標とそれを達成する方法が見えてきます。高値売却というゴールを見据えて、具体的な準備を進めていくようにしましょう!
この戦略を踏まえて、次は高値売却成功のもう1つの要素「不動産業者」に関して、不動産業者の選定方法や依頼する時の重要なポイントなどを解説していきます。
(第10話につづく)