※この記事は実際の不動産体験をもとにしていますが、多少アレンジした「フィクション」として楽しんで頂けると幸いです。 |
◆本を読み漁る日々
インドカレー屋で衝撃的な本に出会ってから一度は夢を膨らませていたものの、何冊か本を読みこんでいくうちに、やはり無理なのではないかと考えるようになっていた。
今ある貯金はたった300万円。不動産投資どころか投資の経験すら無い。銀行は、年収500万円のわたしなんかを相手にしてくれないだろうし、何千万円と借金する勇気もなかった。。。
しかし、どうしても諦めきれず不動産投資だけではなく、投資関連の本を読むことだけは続けていた。毎朝の通勤ラッシュの中でもみくしゃにされながら、通勤の無い日々に思いを馳せながら読みまくっていた。
◆不動産競売とは?
そして、1冊の本に出会った。わたしのまったく知らない世界の扉を開く衝撃の内容が書かれていた。
著書は藤山勇司さんという不動産投資家が書いた本だった。藤山さんは当時勤めていた東証一部の大倉商事という会社が突然の自己破産。毎日当たり前のように通っていた会社が、突然なくなった。
日本企業の終身雇用の崩壊を自ら経験することで、給与収入に頼るのではなく、自ら収入の柱を作っていかなければならないと痛感。不動産投資を本格的にスタートさせる。
そして、藤山さんが出会ったのが「競売」という世界だった。
どうやら不動産の世界にも卸問屋があり、業者などが激安で仕入れいているとある。寿司屋が築地で魚を仕入れるように、飲食店オーナーが合羽橋で道具を仕入れるように、不動産業者が不動産を仕入れている場所があるというのだ。
著者が落札した物件には、都内でも中古の物件を1万円~数百万円で次々入手した事例が紹介されていた。なかには札幌1棟10戸中中古アパートを、たったの210万円で入手していた事例が掲載されていた。
えっ!?中古とはいえ1棟アパートがたったの200万円だって!?
車を買うような金額でアパートが買えちゃうの???
これまで不動産投資というと何千万円、何億円というお金が必要だと思い込んでいたわたしにとって、たったの数百万円でアパートが買えてしまうということに、ただただ驚いた。本当にこんな世界があるとは・・・
「不動産競売」これはやってみるしかない!!
◆競売物件情報サイト「BIT」
興奮冷めやらず、この日は仕事にならなかった。理由をつけて定時で退社すると、すぐに家に帰ってパソコンを立ち上げた。競売物件が掲載されているという「BIT(http://bit.sikkou.jp/)」を開いた。
最初、どうやって見るのか分からず苦戦した。いかにもお役所が作ったサイトだと言わんばかりに見づらく、1棟アパートや1棟マンションというカテゴリも無い。少しイライラする感情を抑えながら必死に物件を探す。
だんだん検索方法にも慣れてきて、物件の探し方もわかってきた。しかし、東京エリアで探しすものの、300万円といった金額で出ている物件は無い。
BITで1棟アパートや1棟マンションを探す時は、種別を「戸建て」で検索します。そして、種類の欄が「共同住宅」の物件を探すと見つかります!
そこで、エリアを広げ、関東全域で探してみることに。あった!本当に数百万円の1棟アパートがある!数は多くは無いけれど本当にある!
競売は入札制で一番高い金額で札を入れた人が落札となる。1棟アパートや1棟マンションは収益性も高く入札数も増える。そのため、表示されている金額で買える可能性は少ない。
それでも、高ぶる感情を抑えきれずにいた。。。
(今でも時々ものすごいお宝物件が出ていることも!?)
◆ついに見つけた運命の物件!
さらに、不動産競売についてもっと知識を付けるために、いくつかの本や教材を購入した。
「3点セット(物件明細書、現況調査報告書、評価書等)」と呼ばれる各種書類の見方や、不動産競売の注意点、落札金額の設定の仕方や落札の方法などを学んでいった。
気が付くつと、毎日の通勤電車の中で本を読み、家に帰ってから競売物件を検索をすることが日課になっていた。サラリーマン仕事はまるで手につかず、競売のことばかり考えていた。
そして、ついに運命の物件に出会うこととなる・・・
(第5話へつづく)
◆編集後記
当時、2003年に出された藤山勇司さんの本がとても売れていて、不動産競売はすでに一般的になりつつあり、すでにこの頃から「競売にはもう良い物件は無い」と言われていました。
藤山勇司さんは「サラリーマン大家」という言葉を根付かせた、サラリーマン不動産投資界の第一人者です。今でも不動産投資に役立つ名著を次々と出版されています。
しかし、今現在でも、粘り強く物件を探している人は、唸るようなすごい物件を実際に落札している人もいます。競売に出ている物件を、任意売却にもっていく方法もあります。先日、とても良い状態の物件を、一般市場ではとても手に入らないような条件で購入された方もいました。
また、競売の他に、「公売」という方法もあります。国有地や都道府県、市町村が売却する制度で、件数は少ないのですが、認知度が低く、まだまだチャンスはあるかもしれません。
優良物件を見つけるコツとしては、そもそも「千三つ」と呼ばれるぐらい、競売だけではなく良い物件というのはほんとにわずかなので、とにかく粘り強く粘り強く探してみることと、そしてちょっとの工夫です。ちょっとの工夫については、機会があればお話したいと思います。